甘えんぼ殿様の後日談です
――行燈の灯りはほんのりと
御簾の影が落ちる畳に、漂う香。
脱ぎ落された白小袖――
いかにも、淫靡な空気である。
「こら、下帯から手をどけぬか。まずは一糸まとわぬ姿を見せよと申したはずじゃ」
「ひっ……い、嫌にござります!」
しかし肝心の夜具の上は、このようにがちゃがちゃと騒がしい。
氏頼の小姓・藤若が、初の夜伽を前にしぶっている。
「おや今何と申した。もう一度言うてみよ。約束を違えるのが武家の子か」
「う……ぐ」
「なんだ、いつもの威勢はどうした。文句があるなら言うてみろ」
「……なにも……ござりませぬ」
「では手をどけよ」
藤若は唇を噛みしめ下帯から手をどけた。
氏頼は嬉々としてほどいてゆく。
「おやこれは、まるで子どもじゃな」
その言葉にかれの頬が一気に紅潮した。発達の遅い身体を気にしていたのだ。けれどあるじが気に留めることは無く「薄いのう」とあるかなしかの陰毛を撫でるついでに、緊張でぐったりしているかれ自身を柔らかくさすった。愛撫どころか触れられることにさえ敏感な体がびくんと跳ねる。この城に来た時と立場は真逆となり、いまや藤若はすっかり鱗を剥がれ、まな板の上で調理されようとしている魚であった。
「何も怖いことはない」と氏頼は大きな目元に滲んだ涙を拭い去り、白く薄い胸の上で上下する桃色の頂きを舌で舐めつぶす。
「あっ……! いた……あ……っ」
「痛いぐらいがちょうどよい加減なのだ。もっと可愛がってやろう」
「あ、あぁ……ん、」
赤い唇から嗚咽ともつかない溜息を漏らす藤若を、氏頼はいっそう愛しく思う。ひっきょう、愛撫にも熱が入った。これまで自身が施された色々を思い出しては藤若に試してゆく。
肝心の場所には触れず、焦らすように周囲をなぞり、吸う。彼の白かった体はたちまち発熱し、いたるところがうっすらと桃色に染まった。頬などは、とれたての林檎のように赤い。
「……あッ…あ…! だめえ……っ」
あちこちに手をやって身悶える。寝所で恥じらう姿が氏頼には初めてで、たまらない。
(この痴態。こちらの方がもたぬ……!)
我慢を知らない若殿に、早くも限界が訪れた。巨体に見合った重量を持つ男根を小さな尻の間の秘部に押し当て、さあ貫こうとする。
しかし、ここで問題が起きた。
(どうしたことだ。少しも濡れていないではないか……それにこのように固く閉じていては少しも入らない)
氏頼には成人の男らしく旺盛な色欲があったが、準備や性差の知識はない。(当然藤若にも無い)
さてどうしようかと考えた結果「濡れればよいわけだ」と単純な名案を思いつく。おもむろに細い脚を掴んで大きく左右に押し開くと、固く閉じたそこに舌をぴたりと当ててぺろりと舐めた。
「と、殿……ッ! そのような汚れたところにふれてはいけません!」
「ぬしの体はどこも清い。よいから任せておけ」
「ひっ……ああ、っあ、いけませぬ。もう、お許しください……!」
「良い具合になってきた」
「ああ……!とても耐えられませぬ……っ!」
(それはこちらの台詞だ、藤若よ……)
しとどに濡れたそこに指を押し挿れてじゅうぶんにほぐれたことを確かめると、ぐいと熱くたぎった肉棒を押しつけた。前とは違い秘部は受け入れ、ずぶりと先端が沈む。はっと鋭く息を吸った藤若に、氏頼は次第に抜差しの幅を大きくとり、細い腰に打ちつけた。
「あっあ、あ……殿……っ」
「そのように他人行儀にするな。名で呼べ、藤若……」
「氏頼様あ……これは、何にござりますか……あつくて、溶けそうです……」
「ようやっと大人になったということだ。みろ、そなたの小さなものが腹を突いて来るわ」
「言わないでください……っ、もう、やめて……」
「うい奴じゃ……お前は外側も良いが、内側もたまらぬわ」
「んああっ……!」
挿入して少しもしないうちに吐精してしまった藤若は、あまりの恥ずかしさにしばらく顔を覆って震えていた。けれどほどなく氏頼が満足するのを目の当たりにしたためか、二度目では我を忘れて氏頼にしがみつき、三度目では言われるままに奉仕した。
控える小姓たちが落ちつかぬ様子で、襖の向こうで何やらごそごそとしていたことなどは、当然二人は知る由もない。
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さて一夜が明け、遠慮がちに起こされた時の藤若の顔といったら、地獄を見たかのごとく青ざめ凍りついていた。昨夜のあれこれを思い出し、脳裏に「切腹」という二文字を思い浮かべる。
そんな彼に、氏頼が調子に乗って「今宵も」と言ったのだから、
手形がつくほど頬を打たれてしまったというのも、無理もない話である。
おしまい
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