7話

朝。いそいそ佐々君のために弁当を詰めることから、私の一日は始まる。

彼はお肉が好きなので、タッパーからお肉系のおかずを選んで、彩りも気にしながら詰めていく。弁当の準備が終わったら、今度はスマホのチェックだ。未読はゼロ件。すべてにきっちり、返事をしている。話が長くなりそうなときは、「もう寝ます」と断りを入れてから終わりにしている。例の三人、麓王くん、白石君、そして緑川くん(この人はスポーツ推薦で入学した、アスリート系のイケメン)については、特別なので、もうちょっと念入りに。

これで藤澤君生活も七日目。色々問題はあるけど、なんとか痛い目に会わないで過ごせている。これまで、藤澤君の回りで小競り合いが起こっているところを何回か見た。けれど、私が藤澤君になってからは、そういう小競り合いは起こっていない。平和そのもの。

ただ、日を追うごとにちょっとずつ佐々君の元気が無くなっているのは気になるけど、まあ順調だ。私は藤澤君よりも、藤澤君をうまくやれていると思う。二つ隣のクラスにいる、「私」がどうしているのかなんてどうでもいい。このハーレム状態を、私はとことん満喫していた。

電車に乗ると、いつもの場所で佐々君が待っていてくれている。「おはよ」私はにっこり笑って挨拶する。佐々君も笑顔を返してくれる……でも、やっぱり最初の時のような笑顔じゃない。

「どうしたの?」小首を傾げて尋ねると「なんでもないよ」とまた微妙な笑顔が返って来る。気にはなるけど、どうしようもない。私はスマホを取り出して、またメッセージが来ていないか、確認した。既にさっきの送った返事の返事がたくさん来ている。誕生会へのお誘い、空いている休日の確認、今日の昼休みに時間が欲しい、云々。私はせっせと返事をした。「葵衣、ちゃんと友達付き合いするようになったんだね」佐々君が褒めてくれた。

嬉しい。やっぱり、佐々君が一番好きだな。

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七日目の夜。

お地蔵さんに願った通りなら、今目を閉じて、次に目を空けたら、もうこの家とはお別れか。

僕は、末黒さんのお母さんやお父さんや弟が好きになっていたから、ちょっとしんみりした。ちょっとテレビの音は大きかったけど、とにかくあたたかいご飯がおいしかった。弟も、「ブス姉、ちょっと来て」などと呼んでは、AVを見せて来るような思春期まっさかりなやつだったけど、兄弟のいない僕にとっては嬉しかった。また明日からは、独りぼっちの毎日だ。痴漢やら変質者の攻撃をかわしつつ、学校でのバランスをとる戦いの毎日。

ただ一つの救いは、末黒さんが入っていると思われる僕が、佐々と登校していることだ。昼は毎日佐々と弁当。僕はこの弁当作りを、末黒さんに倣って続けたいと思っている。末黒さんには大感謝だ。地味女なんて言って申し訳なかった。末黒さんは、素晴らしい女の子だ。もっと自分を上手に見せることができたら、きっときっと、もっとその魅力が伝わるはずだ。僕は元に戻ったら、末黒さんに話しかけてみよう、と思っていた。ありがとう、って言おうって。

そして朝。見慣れた僕の部屋の天井が目に入った時、少し涙が出た。何の匂いもしない、僕の家だ。
誰も来ないのに無駄に広い部屋の姿見に、一週間前と同じ僕が映っている。ただ、少し違和感がある。体の、外も、中も。

「なんだ、これ??」

まず、僕は自分の体内から変なものが出てきたのに仰天した。丸いものがいくつか連なったシリコン製の何かがお尻の中に入っていた。そして、首元にはキスマークと思われるアザがある。こわごわパジャマを脱いでみると、全身、いたるところに、それがある。

「何を!!やってくれてんだよ!!あのクソ地味女!!」

僕は地面に突っ伏した。

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