30Days物書きチャレンジ29日目❽

Twitterでやってる創作遊びの続きです。29日目「リプで貰ったタイトルからSS2000字」今日は八個の最後です。

❽タイトル『掃き溜めに石油王』

まにのすけさんから頂いたタイトルです。石油王もの一回書いてみたかったのでこのタイトルが来た時やったーと思ったのですが、普通に攻め石油王で考えると監禁ものしか浮かばず、じゃあ受けを石油王にするか、と考えていや、でもやっぱ石油王といえば攻めでしょう、とループし始めたのでTwitterでどっちが良いかアンケートした所受けの方がわずかに多かったので石油王受けで書きました。本当にくだらないコメディです。だいぶ暇な方向け。ちょっとだけエロあり。❤︎喘ぎあり。

「おいおいおいおいおいおい、俺今すげえこと聞いちゃった!」

 だらけきった教室に駆け込んできた、赤髪の声はかなり大きく鋭かった。
 しかし、彼の勢いは全く空気に影響を与えず、返事もだらけ切っていた。

「なにー?」
「うるせえよヤナ~コンボミスるだろ~」
「おお、俺今超夢見てたっぽい……おはよ~ヤナ」

 誰一人としてまともに椅子に座っていない。机は足を置く場所で、染髪、腰までずり下がったズボンと二つ以上のピアスは最早校則で決まっていると思われるくらいの乱れっぷりだ。ちなみに現在は数学の授業中である。教師は淡々と板書をし、「うるせえ」と生徒に怒鳴られぬために、静かに気を使って機械の如く授業を進めていた。聞いている人間は当然皆無。「大体午前9時から大体午後3時くらいまでここにいる。昼食を取る。酒・タバコ・市販されていない薬物の摂取不可・異性の連れ込み不可」それがこの高校の「特別科」で唯一決まっていることで、テストにはそっとカンニング……ではなく「参考として良い資料」が添えられる。行事の類は一切ない。

 ここK大付属K高校「特別科」は、その他の「総合情報科」「外国語専修科」「芸術科」「体育科」「普通科」とは校舎が違う。降りる駅からして違う。金さえ払えば「高校卒業資格」を得られ、そのままエスカレーターに乗り、K大「特別専修科」に進むことができ、一年間に50回ICカードをリーダーにかざし、レポート(参考データ集の配布あり)を10本と卒業論文(見本あり)を提出すれば卒業することができる。

 ちなみにK大は、私立としてはニホン国で最も偏差値が高い大学だ。そのブランド力を保つべく、K大付属K高校「特別科」及びK大「特別専修科」の存在はひた隠しにされている。「大卒」その肩書を必要とするが、能力と気力が著しく欠如した富豪の子息ための場所。優秀な姉弟の中からこぼれ落ちたいわゆる「掃き溜め」のために造られた「ふわふわでとろけるほどに甘い檻」である。

 手に入らぬものの無い彼らが驚くことなど早々無い。だからニホン国三大財閥の一角を担う一族の血を流す赤髪の興奮は、あっさりスルーされたのだ。
 しかし、

「転校生、石油王だってよ!」

 次の情報には、さすがの彼らも反応した。彼らは世界に名を馳せる超有名企業の創始者筋の(バカ)子息集団であったが、「石油王」の息子はいない。

「ニホン石油王いないよな? どっから来んだ?」
「ドバイか? あそこ楽しかったな~」
「てか石油王ってオッサンじゃねえの。17歳の石油王って何だよ」
「なあなあ、ターバン巻いて魔法の絨毯乗ってくんのかな?」
「ペット虎だよな! な!」
「とりあえず石油で乾杯いっとく?」
「明日からマジで禁煙しねえとな! 引火キケン!!」

 ヤベ!!
 ハハハハハ!!

 入学初の盛り上がりを見せた教室は、翌朝全員が9時前に登校を済ませ、石油王を今か今かと待ち受けていた。HRになれば、噂を聞きつけた一年と三年も押しかけた。

 そして、時が来る。

「……!」

 総勢89人は、その姿に静まり返ることとなった。
 担任に連れられ入って来たのはまず金髪碧眼の「翻訳者兼ボディガード」次いでペットの「ウルフィ」こと巨大な銀の狼。そして小柄で黒髪の──「17歳の石油王」。

「あ……ボク、アシュガル・ビン・ジャラール、イイマス……ニホンの、ミナサン…ヨロシコ…デしゅ、」
「شكرا جزيلا.……」
「あ、ヨロシク、オネガイシマス、デしゅ」
「جزيلاشكرا جزيلا.……」
「ah? でしゅ?チガウ?」
「で、す、」
「ワカタ! よろしこです! エヘ」

──……!!

 教室……いや、特別科89人+担任一人の心が、これほど一つになったことがあるだろうか。

──可愛い……!──
 
 彼らは数々のパーティやイベントで、姿形だけで金を生める美しい人間を多数知っていたし、そういった者と遊んでいた。だが、先程彼らが共有した「可愛い」はそんなレベルではない。
 ジャラールの子、アシュガルは、「コンボミスった」とメガバンク頭取息子が放り投げたゲームのSSSランクの人気キャラ「クロカミメガネ」にそっくりだった。金髪碧眼の通訳も相当磨かれた容姿であったが、それでも人間だ。
 だがSSS「クロカミメガネ」は神族だ。そして石油王である。そもそも「クロカミメガネ」は言葉を話さない。いや、「クロカミメガネ」はゲームのキャラで、実在しない。

 彼らの未発達でだらけた脳は、あっさりバグを起こした。 

「あ、ボク……えっちなこと、だいしゅきです。おとうさんしんで、お金イッパイ、好きにツカえる……です。たくさん払うので、えっちなことが、したい……くて、来ました。ココ、ハキダメ、むほーちたい、デスネ? ボク、は、えーと……ニホンの、でーけーが、だいしゅき、ニホンゴ、ニホンジン、カッコイイ、おもいましゅ……」

 さらにアシュガルのたどたどしい日本語とその内容が、彼らの脳に致命傷を与えた。 

 通訳は担任にさりげなくウルフィを差し向けつつ、なめらかな日本語で「あなたはダメですよ、アシュガル様はニホンの男子高校生がお好みなのです」と釘を差す。そして、石化している89人に告げた。

 ……というわけで、アシュガル様は皆様をご所望です。ニホン国では同性間の性交渉は盛んでは無いと聞いております。希望される方、されない方、様々おられるかと思いますので……。

 言葉を切り、通訳が指を鳴らす。すると頭にターバンを巻きすさまじく香水をかおらせた屈強男達がわらわらと現れ、五ミリほどの厚さの冊子を配って回った。 

 そのタイトル【アシュガル様の、ニホン男子にして欲しいこと100】

「行き渡りましたか? できることに○、むしろしたいことには二重○、できないことには×を書き入れ本日中に提出してください。学年と名前を……ああ、ファーストネームまできっちり書いてくださいね。同じ名字の方が多く見受けられましたので」
「よ、……よろしくおねがいしましゅ……たくさんの、方と、ナカヨクしたいでしゅ……」
「شكرا جزيلا.」
「あ! です! なかよくしたいです! なかよくしてください!」

 ぺこり。

──……かっ!わ……っ!!

 彼らのイエスを告げる声が、どれ程揃っていたことか。
 それは訓練された軍隊のものと遜色無い、一糸乱れぬきびきびとしたものだった。

「はい、アシュガル様!」

+++

 そして三日後。

「おっきい……の、おいちい……」
「こらアシュガル、言葉遣いがなってないぞ。ちゃんと言え」
「あい、しゅみません……おちんちん、 おいちいでしゅ、……♡」
「よし、いい子だ……もっと奥までくわえさせてやる」
「ん、ぐるち……ん、んんっ、♡」

 特別科には新たな授業【アシュガル様のお時間】が加わった。授業の出席率は、100%である。必死で手を挙げてもなかなか順番が回ってこないのが、目下の悩み。

「よっし! 漢検二級受かった! これで《して欲しいNo.48、体にえっちな漢字落書き》が出来る!」
「喜んでるとこ悪いけどな、俺は柔道黒帯取った。《して欲しいNo.65、関節技で犯されたい》は俺のものだ」

 そして、ぐうたら一辺倒だったバカ息子に突然覇気が宿ったことは、彼らの一族にとって正に、旱天の慈雨だった。

 

 

 

 

おしまい

♡拍手♡←コメントもこちらから