「ねえトモ、俺また極端にカッコイイって言われちゃった。そんなにカッコいいかな? 普通じゃない?」
──またか。
最近毎日同じことを聞かれてうんざりだ。
僕の彼氏の桐ケ谷奏多はつり気味のネコっぽい瞳がチャームポイントの綺麗な顔立ちに加えて、身長180㎝のほっそり7.5頭身、だけに止まらず深緑色からネオンカラーまで似合ってしまうオシャレさんだ。つまりカッコイイの評価を得て当然なのに、本人にしたらよく分からないらしい。
「俺って男にしたら細すぎるしさ、弱そうだろ? 顔も薄いだけじゃん?」
「……別に戦う必要無いし、今はそういう顔と身体がモテるんやろ……昨日もおんなじこと言ったはずやけど」
濃いのと薄いの、マッチョと細いのどっちが好きかって、それも昨日と同じだ。
「別に何でもええわ……」
僕の投げやりな回答が気にくわなかったのか、奏多はコントローラーを放り投げて「骨が浮くぐらいガリガリでもおっぱいEカップのデブでもいいのか」と詰め寄って来た。そんなつまらない事話してないで、さっさと穴掘れって。(ゲームのミッション)
「トモはどんな俺でも好きでいてくれる? 俺がカッコイイ若者じゃなくなっても、ずっと一緒に居てくれる?」
ウッザあ……!
「なんやねん、突然ナヨナヨすんなや……! 黙って穴掘れ! コッチのコンテナ満タンやんけ」
「うう……トモが冷たい」
「何回もおんなじこと言わすな、僕は今の奏多の顔好きやし、体つきも好き。ほんで別に太っても痩せてもオッサンになっても好きやと思うよ!」
ハイ、とコントローラーを渡すと、無言で受け取った奏多(のキャラ)が黙々と穴を掘り出した。流石にちょっと冷たかったかもしれない。気にして隣を伺えば、かすかに肩が震えている。よくよく見れば、口もわなわなと。
──まさか、泣いとんか。
「とも……」
かすかに呼ばれた気がして聞き返す。けれどそれは僕を呼んでいる声では無かった。
「とも♪ とも♪ ともはどんな俺でもすきやで~ぃ♪ えぶりでい♪」
──………。
聴かなかったことにして僕は奏多の掘った穴に、採掘した材料を注ぎ込んだ。
隣のバカを、心から愛しく思いながら。
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